– 壁紙と天才の関係 –
第1回 「ウィリアム・モリスとファン・ゴッホ」
今日、壁紙には無数のデザインが存在しています。シンプルなものから、派手なもの。デザインの大きさや色も様々、ひとつも決まりがなく、デザイナーの自由な発想がそのまま壁紙に描かれています。壁紙に採用されているデザイナーの中には、今や伝説となっている芸術家や画家、テキスタイルデザイナーなど数多くの天才のデザインが壁紙となって現在まで存在し続けています。また、デザイナーではなくとも、絶滅寸前だったシルクの復興に尽力した元スパイなど、各界の“巨匠”が壁紙の中で存在し続けています。今回のコラムは、全2回に分け、そんな天才たちの生涯を追い、壁紙との関係性をひも解いてみたいと思います。じっくりゆっくりお読みください。
「天才芸術家 ウィリアム・モリス」
William Morris(ウィリアム・モリス 1834/3/24~1896/10/3)はロンドン出身の詩人、デザイナー、思想家で、それぞれの分野で大活躍した天才です。「モダンデザインの父」、「モダンファンタジーの父」。それぞれの代表作は、デザイナーとして「格子垣」、「いちご泥棒」、「柳の枝」など。ファンタジーとして「世界のかなたの森」、「ユートピアだより」などが挙げられます。また思想家として、アーツ・アンド・クラフツ運動を実践し、20世紀のモダンデザインの元となったといわれています。日本の民芸運動にも影響を与えています。彼の生涯を多く語ろうとすると、全2回すべて使っても足りませんので、この辺にしておきましょう。前回のコラム「壁紙の歴史」でも少し触れているのでそちらもご覧ください。彼は実際に壁紙を作成した人物としても有名です。現在でもMORRIS & CO.から多くの壁紙が発売されています。日本でも「モリス展」などが大人気なので、目にされたことがある方は多いかもしれません。彼の代表作がデザインされた壁紙を見てみましょう。
一目でモリスとわかる独創的なデザイン性、鮮やかな色遣い、そして壁紙としてのデザインからか、少し奥行きを感じられるようになっています。シンプルながら独創的、限られた色ながら鮮やか、これは彼にしかできない芸術。天才です。実用性を考えて創られているため、あらゆるシーンで大いに活躍できる壁紙です。
「孤高の天才画家 ファン・ゴッホ」
Vincent Willem van Gogh(フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ 1853/3/30~1890/7/29)はオランダ南部ズンデルト出身の20世紀の美術に多大な影響を及ぼした天才画家です。日本でも「天才画家といえば?」と聞くと、必ず名前が挙がるのではないでしょうか。代表作は「ジャガイモを食べる人々」、「夜のカフェテラス」、「ひまわり」などがあります。あまりにも有名な「(花瓶に挿されている)ひまわり」は実は7点制作され、うち6点は現存しています。なお、1点については太平洋戦争時の空襲によって芦屋市で焼失してしまっています。彼の生涯はあまりにもドラマすぎるので、文字で一気に書いてみましょう。彼は、牧師の家に生まれ、画商で働き、教師として働き、書店で働き、聖職者を志し、画家を目指し、画家として数多くの名作と残し自死します。諸説ありますが、生前に売れた絵は「赤い葡萄畑」一枚のみだったようです。物語の主人公にしても大げさすぎる、本当に実在した人物なのかと思ってしまうほどの生涯ですね。多くの自画像、肖像画、風景画に彼の率直な感性の表現が描かれています。それでは、オランダの老舗壁紙ブランド「BN社」とゴッホミュージアムとのコラボレーションで誕生した壁紙をいくつか見てみましょう。
名画を再現した壁紙や、彼が書いた手紙をモチーフにした壁紙など、ファン・ゴッホの世界が壁紙の中で蘇っています。彼の筆あとがエンボス加工によってリアルに表現されています。孤高の天才の表現が手に伝わってくるようです。壁紙が芸術のひとつである証明になっています。
いかがでしたか。第1回ではウィリアム・モリスとファン・ゴッホ、偶然にも同じ時代を生きたふたりの天才について書いてみました。実際に壁紙を創り、芸術性と実用性を世に広めた天才、数奇な人生を終えてから多大な評価を受けた天才、このふたりの生涯そのものが現代の技術によって壁紙というキャンパスの上で蘇っています。壁在るところに壁紙あり。そう、誰でも自由に天才の生涯に触れることができるのです。誰でも自由に壁を彩ることができるのです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。
でも、まだまだ続きますよ。
また第2回でお会いしましょう。
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前回までのコラムはこちら
コラム Vol.2 「壁紙の歴史 -The history of Wallpapers-」
コラム Vol.1「壁彩 -hekisai-」